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子どもが片づけられないのは、大人目線を押しつけるから!
〝今やろうと思っていたのに〟というセリフが聞かれるのはたいがい〝片づけ〟の時が多いようです(時には仕事上でもあるかもしれませんが)。〝片づけ〝には、得意不得意に限らず、人柄が自然とあらわれているように思えます。上手にキレイに片づけている人、傍からは散らかっているようにしか見えないのに自分なりのやり方があるからそのままでいいという人もいます。まったく無頓着に人(家族)まかせにしている人もいます。自分だけの空間だからどのように使ってもいいと思う人も多いのではないでしょうか。
でもほんとうにそうでしょうか。この本を読むと〝片づけ〟というものがどのようなものなのかあらためて考えさせられます。
──自分で決めて、自分で選びとる。これが「生きる力」だとしたら、片づけは「生きる力」そのものです。毎日毎日、決断して選びとる片づけは、「生きる力」を鍛える〝心の筋トレ〟といってもいいでしょう。──(本書より)
この筋トレにはなんの道具も場所(!)もいりません。この本は「片づけられる子ども」の育て方として語られていますが、子どもだけに通じることではありません。子ども向けだからこそかえって万人に通じることが語られています。
肝心なのは「発想の転換」! それがどのようなものなのかというと……。
──収納は「デキる人」より「デキない人」に合わせて考えるべきです。(略)そのへんに散らかしがちなら〝散らかしてしまうそのへん〟にしまえる場所を用意してあげたほうがいい、という発想の転換です。──(本書より)
この発想の転換に必要なのは「目線」です。この本の場合は子どもの目線ということになります。つまり、部屋という世界に対して当事者(生活者=子ども)からどう見えているのかということをまず考える必要があります。
古堅さんのいう発想の転換というものが一番出ているのが、「大切なのは整然と美しく片づけることではなく、使ったものを元の場所に戻す習慣をつけること」ということではないかと思います。整然とした形にならなければ〝〟片づけ〟をしたことにはならないというのは、もしかしたら私たちの思い込みなのかも知れません。
〝片づける(整頓する)〟を英語では〝put a thing in order〟というそうですがorderの語源は、列とか並びとかを意味するそうです。秩序だった状態にする、それは混乱した状態をもとの状態に戻すという意味が含まれているのかもしれません。ここにはやはり全体を見通す視線や、客観的な視点というものがはいっているようです。〝自分がいいならいい〟というものではないようです、なにしろ「モノがあふれた状態」はその場にいる人の「心をざわつかせる」ことがしばしば見うけられるそうですから。古堅さんの経験から「積み上げているモノの山が高ければ高いほど、不安が大きい。そんな気がします」とも記されています。
ところで、orderにも〝o(オー)〟という文字が含まれていますが、古堅さんも片づけに肝要な4つの〝o〟に気をつけるようにいっています。
──片づけには「思いやり」と「折り合い」のダブルo(オー)が必要です。──(本書より)
そしてやってはいけないダブルo(オー)もあります。「思い込み」と「押しつけ」です。
ですから親が勝手に子どものものを捨ててはいけません。「勝手に捨てられた体験がトラウマになって、捨てることやモノを整理することを不安に思うようになる」ことにもなる場合があるそうです。
確かに〝片づけ〟というのは古堅さんがいうように何かを「決断」するということです。さらにその決断は「居心地の悪い空間をどのように整理するかをじっくり考えるので『問題解決能力』も伸ばして」くれることにもつながります。
「片づけはゴールではありません。スタートラインに戻すこと」、この言葉を頭にいれて自分の周りを見回してみようと思いました。片づけられる人になることの重要性を優しい言葉で、子ども(=他者)のせいにするだけでなく、自分を振り返りながら考え、感じさせてくれる好著です。
レビュアー
編集者とデザイナーによる書籍レビュー・ユニット。日々喫茶店で珈琲啜りながら、読んだ本の話をしています。
note
https://note.mu/nonakayukihiro
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