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「琉球独立論」で露呈する、日米の歴史的悪意

2016.03.01
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沖縄に核兵器が配備されていたことが明らかになる写真が公開されました。配備されているのではないかという噂は以前からありましたが、それが白日の下にさらされました。

アメリカが沖縄の軍事的役割をいかに重視していたかがよく分かります(もちろん今も重視しています)。それは日本も同様です。「17世紀から今日にかけて、日本は琉球の軍事的、政治的、経済的、外交的利益をいかにして得るかという物欲的な関心でしか琉球をみていないのです」といわれるように。

松島さんはそのように沖縄をみているのは日本人の心に差別意識があったからだと記しています。「戦前は琉球人個人にたいする差別が蔓延しましたが、今の問題はむしろ集団的差別です。琉球全体に基地をむりやり押し付けるという差別です。それは今に始まったことではなくて、沖縄戦、米軍統治時代に琉球人が経験したことも集団的差別と言えます」と。これを否定できる人はどれくらいいるのでしょうか。

今の基地問題にしても地政学的な(それも正しいのかどうかはわかりませんが)役割としてのみが協調され、沖縄県民が持つ日本国憲法第13条に規定される「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」の幸福追求権を認めているようには思えません。もちろん基地の危険の除去はその一部にはなりますが、それがそのまま沖縄県人の持つ幸福追求権を政府が遵守していることになるとは思えません。沖縄の位置が現在のパワーポリティクス上で、重要視せざるを得ないものだということが沖縄県民の幸福追求権を制限する理由にはなりません。

一方、アメリカ軍統治時代の沖縄の人たちには、日本人(本土人)はどう見えていたのでしょうか。

「平和憲法のもとで生きる、平和な日本に住む人々としてイメージされていました。それだけ米軍統治下の琉球が悲惨であったわけです。「理想の日本人」は、将来自分がなるべき存在、目標として琉球人は考えていました。「復帰」と同時に、日本と一体化することで基地がなくなると思っていました。しかし、現実は無惨に裏切られます。平和な日本が幻想でしかないことが明らかになります。米軍基地はなくならない、返還された土地に自衛隊基地が建設される、最新の軍用機が配備されるなど、「復帰」後、時間の経過にともなって、日本への期待は小さくなり、怒りだけが生まれてくる」ようになったのです。

希望が幻滅に変わっていったのです。政治の〝現実的〟判断という名のもとに……。そして生まれてきたのが「日本に期待しない、琉球の問題を自分で決着をつける。その究極のかたち」としてのこの「琉球独立論」なのです。

独立というと近年のスコットランドの独立が話題になりましたが、スコットランド王国は1707年の連合法によってイングランド王国と対等の合併をしました。対等といっても形式的なものでしかないと批判する人もいますが。

かつての琉球王国は1879年の〝琉球処分〟まで独立国でした。スコットランド王国よりも長く存続した王国でした。ただし1609年の薩摩藩の侵略により付庸国(ふようこく)とされましたが、清にも朝貢(ちょうこう)を行い、「両属」という体制をとりながら琉球王国は独立国家であり続けたのです。琉球王国が独立国家であることは、琉米修好条約や琉仏修好条約、琉蘭修好条約が結ばれていたということからもあきらかです。

ではなぜ琉球は〝処分〟という名の併合を日本から強いられたのでしょうか。「欧米諸国が琉球を狙っているから日本がその前に琉球を所有する」という考えだったと松島さんは記しています。さらには「日本がアジア太平洋上で獲得した最初の植民地が琉球です。琉球併合は日本の植民地支配全体の文脈のなかで語られるべきです」とも。琉球は、明治政府によって中央集権体制を維持し、〝対外的な防備〟のために併合処分されたのです。今に続く〝対外的な防備〟の根拠地としての沖縄の始まりです。

少なくとも明治までは琉球は独自の国家と文化を持ち、その独自文化は今も生き続けています。琉球独立は絵空事ではありません。スコットランドだけでなく、ヨーロッパではバスク、カタルーニャなどさまざまな地域で起こっています。そのどれもが独自の文化と民族をもとに主張されています。その内実は、琉球が独立を主張することと少しも変わりはありません。もちろん独立の意志は沖縄県民(と呼んでおきます)が持つかどうかであり、他からその意志の諾否をはかることではありません。

太平洋戦争末期には本土決戦の時間稼ぎのために市民を含む多くの人びとが犠牲になり、戦後はアメリカの軍政下で基地機能優先の歴史を送った沖縄。日本への施政権返還後は本土の米軍基地は縮小されたものの沖縄の基地は拡大する一方でした。その歴史をかえりみることなく、サンフランシスコ講和条約が発効した4月28日を第2次安倍内閣(2013年)は主権回復の日と定めました。沖縄の主権は含まれていません。回復されていませんでした。沖縄県民にとっては日本から切り離された〝屈辱の日〟であったのです。

この本は政治的な役割(安全保障等の国策)を琉球に押し付けてきた日本の姿、その日米関係を考え直す大きな助けになると思います。〝いま目の前にある危機〟の重大性を否定することはできませんが、その危機を超えて生き続けるのが文化であり民衆だと思います。私たちには、松島さんが起草した「琉球独立宣言」に込められた思いを正面から受けとめる必要があると思うのですが。

レビュアー

野中幸宏

編集者とデザイナーによる書籍レビュー・ユニット。日々喫茶店で珈琲啜りながら、読んだ本の話をしています。

note
https://note.mu/nonakayukihiro

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