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【史上最強の官房長官】菅義偉、叩き上げの「官僚操作」スキル

影の権力者 内閣官房長官菅義偉
(著:松田賢弥)
2016.02.04
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歴代官房長官の中でも、史上最強の官房長官、との呼び声が高い、菅義偉(すが よしひで)官房長官の人物伝である。

本書は、恐らく総務大臣や官房長官になってからの菅氏しか知らない大半の読者にとっては、その人となりを知るのに格好の書である。特に、政治家になるきっかけや官房長官に至るまでの道程を丹念に追っているのが特徴だ。

さて、菅義偉という人物が高校を卒業後、上京してから官房長官に至るまでのプロセスは、異色と言ってよい。

豪雪地帯で知られる秋田県の雄勝郡秋ノ宮村(現在は湯沢市秋ノ宮)出身、高校卒業後に上京し、2年間は段ボール工場での労働やアルバイト生活にあけくれながら勉強、大学に入学。大学卒業後は、サラリーマン勤めをしている。そして26歳で政治家の秘書になった後、横浜市議になるのは、38歳だ。その後、国政に出馬して最初の当選を果たすのは、48歳になった時である。つまり、叩き上げの遅咲きの政治家なのだ。

特筆すべきは、11年間の議員秘書時代だろう。この時に、役人との関係の作り方を覚え、現在に至る。官邸主導による官僚人事の把握と使いこなしに生かしていると言えそうだ。

これに比して、衆議院議員になってからは、スピード出世している。当選から6期目で官房長官になれたのは、著者も指摘するように、政権交代後、野党転落時に安倍を直接口説いて、第2次安倍政権誕生の立役者となったことが大きい。

菅氏の人物観がよくわかるのは、小沢一郎に対するこの言葉だろう。

「小沢さんには土の匂いがしない。地中を衝いて中からムクムクと出てくるバッケ(蕗の薹)のような匂いがないんです。東京で育った人だ。故郷の岩手が、あの人からは感じられない」

世襲議員の禁止、脱派閥、73歳の議員定年制度などを打ち出しているのも特徴だ。実際に本人はいくつかの派閥を渡り歩き、現在は無派閥だ。

そして、史上最強の官房長官との呼び声の背景としては、やはり、官邸主導の政策意思決定と官僚幹部人事の実行であることは間違いない。

市政から国政に進出している点、苦労人で遅咲きである点、官房長官を務めている点などから、様々な点で野中広務氏と比較されるが、より詳しい内容については本書にゆずるのでぜひ読んでいただきたい。

欲を言えば、菅氏の家族、霞ヶ関官僚、思想に影響を与えた作家や書籍などについてのインタビューがあると、もっと菅氏を身近に感じられたと思う。

本書は、菅氏という人物を通して、現代の日本の政治の権力構造を分析するのに有用である。その意味で、特に政治家を志している人、霞ヶ関官僚におすすめの書である。

レビュアー

望月 晋作 イメージ
望月 晋作

30代。某インターネット企業に勤務。年間、150冊ほどを読破。

特に、歴史、経済、哲学、宗教、ノンフィクションジャンルが好物。その中でも特に、裏社会、投資、インテリジェンス関連は大好物。

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