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日銀に代表される日本の金融経済政策がいかに間違いだらけであったのか、それが人災であることあきらかにしているのです。
今の日本の不況の始まりはどこだったのか、川北隆雄さんはそれを「平成の鬼平」(名付けたのは 佐高信さんですが)と呼ばれた三重野日銀元総裁の失策から始まったとみています。
「「三重野日銀」による度重なる利上げは、大蔵省による不動産融資の総量規制と相まって、急速な信用収縮を引き起こした。カネ余り現象とはまったく反対の現象であり、それがバブル崩壊を加速させた。客観的に見れば、「バブルつぶし」が行われたのは疑いない事実である。そして急速なバブル崩壊が、後の日本経済に計り知れないダメージを与えた」
失策はこれだけだったのではありません。学閥人事ともいえるようなことをおこなった橋本龍太郎元首相の失政も相まって不況は悪化の一途をたどります。そしてその後の小泉純一郎元首相(というより竹中平蔵さんが主導した)の構造改革がもたらしたものはなんだったのでしょうか。
川北隆雄さんは竹中さんの論文を引いた後、明解にいっています。
「竹中は、小泉改革が始まる以前から、日本の格差社会化が進んでいることを認めたうえで、その傾向をさらに進めるべきだと主張していたのである。同じスタートラインに立つ「機会の平等」さえ確保しておけば、あとは本人の能力や努力、運次第で、所得や資産に格差が生じるのはやむを得ない、というより、その方が望ましい、というわけだ。そして、それが「普通の社会」だというのである。竹中や小泉にとっては、再分配後の所得が極めて平等なスカンジナビア三国などはさしずめ、「異常な社会」ということになるのだろう。ただ、竹中のいう「普通の社会」で、「機会の平等」が確保されているかどうかは極めて疑わしい」
もちろん
「小泉政権の五年五ヵ月間は丸六年プラス一ヵ月間の「戦後最長景気」と期間がほぼ重なっている」
という事実も公平に指摘しています。けれどその好景気が私たちにもたらしたものといえば、
「その結果、実現した「普通の社会」とは、(略)相対的貧困率で見ても、ジニ係数で見ても、OECD諸国の中でワースト上位に入る「不平等社会」」
だったのです。そしてそれは格差拡大として今も続いています、改善される方向はいまだに見い出せていないものとして。
川北隆雄さんは日銀に代表される日本の金融経済政策がいかに間違いだらけであったのか、それが人災であることあきらかにしているのです。
「日銀が保有する自前の「超高級料亭」であり、日本の金融に関する重要事項はここで密議を凝らされる」際に使われた「東京・赤坂の氷川神社裏手の日銀氷川寮」、そこで凝らされた密議がもたらしたものがなんだったのか。日銀と財務省の思惑をのみ優先していたとしかいいようのない金融政策を続けた歴代の日銀総裁の失策をわかりやすく、川北隆雄さん事実に即して語っています。
アベノミクスで日銀は、金融政策は、経済政策は変わったのでしょうか。それは私たちに安定や将来への不安を取り除いてみせたのでしょうか。さらに、失敗だらけの経済政策はもう終わったのでしょうか。川北隆雄さんはそれにはまだ懐疑的なようです。この本は経済史(日銀史)としても読めるもので、こういった本から私たちが学ぶことが歴史(過去)に学ぶということなのではないでしょうか。力作です。
レビュアー
編集者とデザイナーによる覆面書籍レビュー・ユニット。日々喫茶店で珈琲啜りながら、読んだ本の話をしています。
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