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「男らしい男」と「女らしい男」どちらがより支持されるようになるのか
(著:信田さよ子)
最近、資生堂の℃美容推進委員会サイトで提唱された「ヌクメン」という言葉がネットで話題となっていました。
このヌクメンの五箇条とは、オンとオフにギャップあり!、〈やさしさ〉が標準スペック!、子供や動物に愛されてしまう!、感情豊かな万華鏡フェイス!、カラダの細部にキレイが宿る!とのこと。「ヌクメン」のイメージにぴったりな男子として千葉雄大さんが選ばれていました。
この五箇条を総合してみると、つまり「女子力」のある男の人が女性たちから求められているのではないかと感じました。そんなときに読んだ信田さよ子さんの『選ばれる男たち』には、女性にとっての「夢の男」について語られていました。そこには偶然にも、「夢の男とは一言でいえば『女らしい男』のことである」と書いてあったのです。
ただ、ここで少し違うのは、「夢の男」と「ヌクメン」に対する期待度です。
信田さんは、人生経験の豊富な「おばさん」は、もはや現実に「夢の男」がいるとは思っていないと言います。男らしさに固執するあまり、話を聞かなかったり、女性を下に見たり、感情を言葉にすることをこばんだりすることを実際に見てきたから、そんな男はいるはずないと思っているわけです。長い人生の中で男性に「絶望」を感じ、男性から「性的対象から外された」おばさんだからこそ、「夢の男」を夢の中で想像できるということで、もはや現実に期待などほとんどしていません(もちろん、そんな「絶望」に対しての働きかけとしてこの本はあるわけですが)。
対して「ヌクメン」に共感しているのは、未婚の若い女性でしょう。でも、この「選ばれる男たち」が出版されてから5年。2009年には、現実社会にはほぼ存在しないからこそ、「おばさん」たちは「夢の男」を夢想するしかなかったわけですが、いまは現実に「夢の男」がいてもおかしくないし、男の子自身がそんな優しい男の子を目指すこともまだまだ少ないけれどあることはある……くらいにはなったのではないかと思えます。
また、まだ「性的対象から外された」わけではない女性たちも、「絶望」を感じたときは、それに対して「NO」と言い、現実でも「ヌクメン」を目指してよ、と男性に要望するくらいには強くなっている気もするのです。
世の中には、草食男子を「なげかわしい」と言ったり、支配的な人のことを男らしくて頼りがいがあると思っている人もたくさんいるとは思いますが、これから、「男らしい男」と「女らしい男」どちらがより支持されるようになるのかが気になります。
レビュアー
1972年生まれ。フリーライター。愛媛と東京でのOL生活を経て、アジア系のムックの編集やラジオ「アジアン!プラス」(文化放送)のデイレクター業などに携わる。現在は、日本をはじめ香港、台湾、韓国のエンターテイメント全般や、女性について執筆中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に「女子会2.0」(NHK出版)がある。
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