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戦争の記憶を語り継ぐ〈4〉評伝や日記から人物像に迫る『昭和の怪物 七つの謎』ほか

1945年8月15日――多くの尊い命が犠牲になった第二次大戦の終結から70余年が経ちました。悲惨な戦争の歴史を振り返るとともに、あの悲劇を二度と繰り返さないよう、私たちはいま一度考えたいものです。
ノンフィクションから学術書、小説まで各カテゴリに分類しながら、講談社の「戦争を読み解く」書籍をご紹介します。
最終回となる今回は、日記や評伝、手紙などから見えてくる戦争に関わった人物像に焦点を当ててみましょう。70余年の時を越え、彼らが伝えようとしたものとはなんだったのでしょうか? 日本人の誇りと勇気、彼らの素顔が見えてくる日記や手紙、自伝・評伝をまとめました。

2018.08.15
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評伝・日記・手紙から人物像に迫る

『昭和の怪物 七つの謎』書影
著:保阪 正康

人間は社会に出るとさまざまな立場におかれながらも適合しますが、それゆえ、その人を評そうとしたときに多面性に驚かされます。人を多面的に把握することは難しく、だからこそ、私たちは彼らに近しい人間の声を聞き、少しでも理解したいと考えるのでしょう。
本書は、側近や家族、関係者、あるいは本人の証言をもとに、昭和の怪物的な軍人たちの知られざる側面に迫ろうというもの。例えば、太平洋戦争開戦の罪と殺人の罪とで、A級戦犯として処刑された陸軍大将・東条英機。その彼と対立し、満州事変や満州建国の中心人物であったにも関わらず戦犯として裁かれることを免れた石原莞爾。周囲が見ていたこのふたりには、どのような考え方の相違があったのでしょう。
長年、東条や石原の秘書を務めた人物を訪ねての長時間の取材によって、新たな歴史の断面が明らかにした貴重な1冊です。

『白洲次郎 占領を背負った男』書影
著:北 康利

戦後、吉田茂の側近として日本国憲法制定の現場に立会い大きく関与し、また、いち早く日本の経済的独立を目指し通商産業省創設に奔走。しかし、表舞台には立たずに在野精神というダンディズムを貫き通した男がいます。それが、本書で取り上げている白洲次郎でした。
本書は、エッセイスト白洲正子とともに過ごした彼の人生を、膨大な資料を基に解き明かします。第14回山本七平賞も受賞した貴重な評伝。戦後の混乱のなかにあって日本を支え続けてきた人物の足跡を辿ってみましょう。

『天皇の歴史8 昭和天皇と戦争の世紀』書影
電子あり
著:加藤 陽子

昭和天皇の時代を、戦争を中心に描く好評シリーズ「天皇の歴史」の8作目。生涯で三度経験した焦土は、昭和天皇の戦争と平和をめぐる概念にどのような影響を及ぼしたのか。

『牟田口廉也 「愚将」はいかにして生み出されたのか』書影
著:広中 一成

インパール作戦を失敗に導いた愚将として知られる陸軍中将・牟田口廉也。しかし、果たして牟田口個人の責任に帰すべきか。牟田口の軍歴を追い、日本陸軍の体質の問題に迫る。

『真珠湾攻撃総隊長の回想 淵田美津雄自叙伝』書影
電子あり
著:淵田 美津雄 編・解説:中田 整一

真珠湾奇襲攻撃の総隊長として海軍機動部隊の精鋭を指揮した海軍大佐・淵田美津雄本人による自叙伝『夏は近い』を初めて活字化したもの。開戦と敗戦の現場を目撃した男の貴重な著作。

『四月七日の桜 戦艦「大和」と伊藤整一の最期』書影
電子あり
著:中田 整一

山本五十六に最も信頼され、司令長官として戦艦「大和」と共に沈んだ海軍大将・伊藤整一。本書は彼の家族に対する愛と、彼が独断で多くの若者を救った一件に焦点を当てた1冊。

『久生十蘭「従軍日記」』書影
著:久生 十蘭

「小説の魔術師」の異名を取り、今なお熱狂的なファンを持つ直木賞作家・久生十蘭。彼の没後50年目に発見された、海軍報道班員として南方に派遣された昭和18年の貴重な日記。

『徳富蘇峰 終戦後日記 『頑蘇夢物語』』書影
著:徳富 蘇峰 解説:御厨 貴

言論人・徳富蘇峰が戦意をあおった容疑で自宅に蟄居しながら綴った膨大な日記。昭和天皇への苦言や元首相らへの批判、戦局を見誤った悔悟を綴り、敗戦を巡る議論を巻き起こした1冊。

『吉田茂=マッカーサー往復書簡集 [1945-1951]』書影
編・訳:袖井 林二郎

連合国軍最高司令官マッカーサーとの外交に力を注いだ吉田茂の、当時の占領軍との折衝を明らかにする書簡の数々。その息詰まる過程を記し、日米の相互関係を垣間見る。

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